「理想と現実」
取引先からの、突然の内容変更。
対応した部下からの緊急連絡が入った。
「私が行くまで、待て。
その変更は、
我社にとってデメリットが大き過ぎる」
部下に指示を出した私は、
休暇中にも関わらずステアリングをオフィスに向けて切る・・・。
会社に到着すると、
先方の管理職が担当と共に既に応接室に来ているという。
発注元が、わざわざ出向いての変更指示。
本気度に、社の空気が張り詰めている。
すまんな。聞くところによると休暇中だったそうじゃないか」
「いえ、○○様からのご依頼ですので・・・」
挨拶もそこそこに、商談に入る。
20分後、机をたたき、
怒り口調で先方がこう言った。
「いいんだね。私達の要求を飲まないということが、
今後の御社との取引に影響を及ぼすことになっても!」
「はい。私達の技術は、
自信と誇りを持ってお取り引き先様へご提供しております。
今回の御社のオーダーは、
あまりにも当社のリスクが大きすぎる。
これはお断りするというのが最善の方法と考えます。」
先方は、捨てゼリフとも取れる言葉を発して、
席を立つた。
これでよかったのだろうか?
埠頭から街の夜景を見ながら、自問自答する。
今まで、全ての判断を間違ってこなかった自負はある。
よし。
俺は、俺を信じよう。
明日の大きな商談に向け、私は気持ちを高めていった・・・・
そんな想像をしながら、私は電車に揺られている。
「すぐ来て」
先方部長からの連絡。
あのかたの「すぐ」は、本当に「すぐ」なのだ。
電車を降り、駅の階段をダッシュ。
靴が脱げ、こけかける。
急げ、急げ~!
はぁ、はぁ。
着いた~。
先方の入口ドアを開けた途端、
事務員さんが出てきてこう言われた。
「jetさ~ん、ごめんごめーん。
部長、ちょっとお昼行ってますねん。ちょっと待ってて~」
「おう、jetくん。悪い悪い。」
小さい声で
「フィーバー3回かかってしもてな~」
え?パチンコしてたの?
「いやいやいやー。儲かったわ~。
儲かりついでに、・・・
こないだの見積書のやつ。無しにしといて」
は?
「作るって、
部長がGOサイン出したあの件ですか?
あれ、もう動いて・・・ますよ!」
席を立ち、私の背後に立つ部長。
吹き飛んでほしい~の~?
「おっしゃっておられる内容で
ご変更は問題ありません!
と言うか、そうさせてくださいっ!」
お~そうかそうかと
ほなこれやるわと差し出された
パチンコの景品の
「よっちゃんいか」を
いらん~
と思いながらも笑顔で受け取り、
「これ好きなんですう~」と
心にもない事言ったら、
ほなもう一個やるわて
机から出してきて渡された。
いらんちゅうねん!
と激しく「心の中」で怒鳴りながら
二つ折れになるぐらいお辞儀をし
「ありがとうございました」
と元気に言って取引先を後にした。
・・・・・・・・・・・・
さて、(ノTДT)ノ
で、どうすんだよ~
と悩んでみても、何も変わらぬこの事態なり。
下請け泣かすわけにはいかない「板挟み」担当だからね・・・。
そして、状況そのまま家に持ち帰り、
発泡酒片手に縁側で猫にぼやく日々。
佐藤浩市みたいに
なりて~なぁ。
下請け営業なら、こんなん必ず通る出来事ですわな~。
私も、前の会社で、何度か理不尽なキャンセルのまされました。
その事を思い出す度、
佐藤浩市演じる「サムライX」の
須藤部長を思い出すわけです。
世の中の悲哀を抱えたサラリーマンが憧れる、部長像。
ただ、理想と現実には大きい格差があって
こうなりたいと思っている
ほとんどの人が、夢かなわず・・・
気付いた頃には・・・
こうなってますわな~(T-T)
今回、落としキャラで使わしていただいた
三國さんも、温水さんも成功者なわけで・・・
それを思うと、さらに現実の厳しさ、悲しさを
噛みしめてしまうんですな~
チャンチャン。